スマートニュース株式会社の西尾と申します。広告開発チームのエンジニアリングマネージャをやっています。もう一月前になってしまいましたが、2018年6月20日に、LINE株式会社で行われたMeetup in Tokyo #37 ニュースメディアにおける広告技術 に登壇しました。
自分は大学時代に物理学を専攻していましたが、物理学はソフトウェアエンジニアリングと直接結びつくわけではありません。しかし物理学がスマートニュースの問題解決に役立った事例があり、とても面白かったので、今回ぜひ紹介したいと思います。スライドには数式が多いので、自分には関係ないと思われる方も多いかもしれません。そんな方には、ぜひ最後の「発表にこめた思い」を読んで欲しいです。
現在自分は特に広告配信アルゴリズムの開発・実装という側面でチームをリードしています。
広告配信のアルゴリズムは大抵は秘密にしておきたいものですが「AI・機械学習によって最適値を計算しています」というぼかした説明をしても全然面白くないので、今回は運用型広告配信における 自動入札機能 に関する数学的な理論の話に踏み込んで発表してみることにしました。
自動入札機能とは
運用型広告においては、メディア(SmartNews)は収益性の高い広告を選んで配信するというオークションを開催しています。
具体的には、それぞれの広告主が自分たちで入札価格($\simeq$クリック単価)を設定します。そこにどれだけその広告がクリックされやすいかの予測値($\simeq$CTR)を掛け合わせ、そのスコアに基づいてどの広告を配信するかを決めるという仕組みです。
広告主サイドからすると、入札価格を上げることでオークションに勝つ確率が上がり、広告配信を増やすことができますが、クリック単価が上がってコストも増加してしまうというジレンマの中で、入札価格を調整していかなければなりません。
この入札価格の調整を自動で行うという機能が自動入札機能です。
自動入札機能では、通常なら広告主が設定する入札価格を、広告主の目標値を最大化するようにメディア(SmartNews)側で最適化します。人間による調整よりもはるかに細かく最適化できるので、ほとんどの場合で自動入札機能を使うことで広告の成果指標は向上します。
SmartNewsにおいては、この機能は2017年にリリースされています。
発表内容について
上記がいわゆるぼかした説明というものです。この発表ではもっと数学的に踏み込むことを目標にしました。
- 自動入札機能において、最適な入札価格 を決定するという問題の数学的な定式化
- シンプルな場合における具体的な解析解の導出
発表ではこの2点の解説をしました。数学の比重が大きいのですが、興味を持っていただいた方には詳細は発表スライドを見ていただければと思います。この定式化は理論的にきれいであり、いろいろな問題設定へ応用可能と思いますので、結論としての解析解だけではなく、ぜひ定式化の論理を追っていただきたいと思います。
(注) 発表内容は、SmartNewsにおける自動入札機能を開発・改善するにあたって大いに参考にしたものですが、実際のロジックそのものを説明しているわけではありません。実際のロジックには他にも様々な工夫があり、その内容は秘密です。
発表にこめた思い
また、この発表を通じて暗に伝えたかったということは、広告技術の領域は数学・物理学の知識が実際に生かせて面白いよ、ということです。
発表スライドでは ラグランジアン や 変分法 といった数学的技術を使って、最適な入札価格を決定しています。エンジニアにとってはあまり馴染みがない要素かもしれませんが、実はこれらは物理学において基礎となる道具立てです。自分は自動入札機能の開発を経て、優秀なエンジニアと数学・物理学の出身者が一緒に仕事をする相乗効果によって、優れたサービスを生み出されることをより強く信じるようになりました。そしてスマートニュースをそのような会社にしたいと考えています。
エンジニアの方も、数学・物理学の出身者の方も、社食での無料ランチもございますので、ぜひオフィスに遊びに来ていただければ幸いです。応募の前にカジュアル面談・社食ランチなど興味を持っていただいた方はぜひ以下からご連絡ください。お待ちしております。
今回の発表に関係あるポジションは以下です。
他にもさまざまなポジションで採用しておりますので、採用ページをご覧ください。
LINE株式会社様への謝辞
発表の機会をくださりありがとうございました。登壇後、いろいろな方とお話しする機会にも恵まれ、とても貴重な経験となりました。またよろしくお願いします!